violetandlightblue-4


azure・blush・purple・white(仮)


 クラストは何のことだ、と少年を見つけたときの事を反芻していた。
 しかし思い当たる節は全く無い。あの空間に居たのは自分とこの少年だけであったし、第三者が居る気配は無かったはずだ。
 と、すると恐らく幻覚でも見たか、それとも――
「先生連れてきた」
 サラが息切れしている老医師を引き連れて来た所で、クラストは我に返った。
――何と、おぞましいことか。
 それは、自分に対してそう思ったのか、それとも目前で見知らぬ人間と対峙し、恐れ戦いている幼い者に対してそう思ったのか。
 考えてもしょうがない事だ、とクラストは思う。少年は触れられまいと暴れたが、まだその力というものも高が知れている。あっさりと大人に押さえつけられて、鎮静剤で再び眠りに付いた。



「さて、どういうことか詳しく説明して頂きましょうか、5代目」
 少年の事はサラに任せてある。万が一またパニックを起こしても大事には至らないだろう。
 クラストは今しがた帰ってきた組長を正面から見据える。
「相変わらずせっかちだな、狩野君は」
 若頭―いや、君のお父さんはかなりのマイペースだから、やっぱり君は母親似なのかな、と言って5代目組長――古賀は屈託無く笑った。
「せっかちだろうとなんだろうと構いませんよ。俺はさっさと事情を説明して頂きたいんです」
 古賀はやはり、アイツとは全然似てないなあ――と言いながら足を組みなおした。
「さて、どう話せば良いものか…」
 ひう、と乾いた風が吹いた音がした。
「――あの子は、マフィアの、ボスの子だ」
 瞬間、少年のオッドアイが頭をよぎる。
 クラストは道理で一般人と雰囲気が違うわけだ、と思った。オッ<ドアイから特別な印象を受けたせいもある。
「で、まあ…そのマフィアというのが、シチリア発祥の――古い歴<史を持った家柄の、だ、そうだ」
 古賀の声音は淡々としたものであったが、その中に恐怖を感じているのが伺えた。語尾が若干ではあるが不安定である。
 と、するとやはり相手は相当の規模を有しているのだろう。この古賀一家もそれなりに日本の裏社会で名の通った家だが、マフィア<の本家であるという話が本当であるなら、この一家は容易に屈してしまう可能性は否めない。
「で、その――普通の、といったら可笑しいが…いや、ここではそう言っておこう。普通のボスの子なら、まだ問題は無かった。彼はそこで――不憫だが、親に命令、されて、ころ、し、を――」
 古賀はそこで言葉を断った。言いたくないのだろう。この男はとりわけ子供が好きなのだ。時にそれが弱みになろうとも、彼はそれを隠すつもりが無いらしい。
「で、しょうね。見たとき不思議だったんですが、これで合点がいきました。あの子の眼ですが」
 クラストは自身の青い眼をとんとん、と指す。
「殺し屋の目つきでしたよ。それも、プロ級の」
「――そうか…やはり…」
 自分が好きな子供がそのような事をしているなどとは信じたく無<かったのだろう。威厳を保とうとしているらしく表情には出ないが、愕然とした声になっている。
「…続きを話そうか。ここからどういった経緯かは、私も知らない。ただ、とにかく私の知人が、その子を日本で匿っていたそうなんだ。匿っている間は、おとなしい事この上ない、と聞いている。だが…突然、暴れだして――姿を消してしまった。だが、お上を頼るわけにもいかない身分の子だから、私の所へ探してくれという話が舞い込んだ。大層な身分の子だ。大っぴらに探すわけにもいかないから狩野君、君に頼んで――今に至る」
 古賀は少年が鎮静剤を打たれて眠っているであろう方角を見る。
「成程。事情はある程度、理解できました。しかし――」
 それは家の存亡の危機にしかならぬ。
 古賀もよく分かっているはずだ。予め分かる危険分子は避けねばならぬ。
「君の言いたいことは良く、分かる。けれど、このまま知人の所へと帰す事がついさっき、出来なくなった」
「殺されたのですか」
「いや、得体の知れない奴らに誘拐されてしまったようだ――信じたくは、無いが、事実だ」
 人質か、口止めか。まあいずれにしろ、少年を元の居場所へは戻せないようだ。
「我が家の安全を考えるなら、それでも少年を手放すべきだ、というのは理解できるんだがな――どうしても私は放っておけないんだ」
「5代目がそう思うなら異存はございませんが」
 実際は大いにある。少年を手放さない事で得るものは災いだけだ。そう言った所で下っ端の意見が通じるものではないが。
「…有難う――だが、全員が納得はしないだろう。君も、そうは言<ってくれたが…心の中では、納得いってないだろう」
 この状況下に置かれて、そう思わない人間があるはずがないと彼も分かっているのだ。分かっていてもなお、どこかで彼の良心が痛むのだろう。
 だが、後先はない。
 だから、クラストは次に言われる古賀の言葉が分かっていた。








「狩野君、また――頼みがある」











 そして、クラストは少年が居る部屋に戻った。
 既に老医師の姿は無く、そこにはサラと一見落ち着いた様子の少年が居るだけであった。
 だが、人が居るにもかかわらず殺風景だ、と思う。何も無い。どこか寂しい。
「で、どうだ」
「何がどーだ、なのよこのバカチン」
「……容態が、だ」
「変わんないわよ。今は薬で落ち着いてるけど、あんまり刺激は与えるなって」 
 当たり前のことよねえ、とサラは付け加える。
「あ、そうそう」
 サラはぽん、と口元で手を合わせ、眼を輝かせた。
 彼女は年に合わず、幼いことをよくするのだ。
「日本語、少しは分かるみたいで。助かっちゃった」
「…へえ」
 少し会話をしたから日本語がしゃべれる事に違和感は無かった。
会話というよりはただの言葉の言い合いに近いものがあったが。
「興味なさそうねえ」
「ない」
 すっぱりと切り捨てると、アンタ相変わらず可愛くない奴ね、と言われる。
 これが可愛かったら問題であるから、クラストは気にしない。
「まあ、それはどーでもいいわ。ね、やっぱり此処で匿うんでしょ、この子」
「…相変わらず(勉強はできないが)勘はいいな」
「……間があったのは気のせいかしら」
「気のせいだ」
 で、匿うからなんだ、とクラストは話を促す。
「…うん、じゃあ自己紹介しようかな、って思って。私はもうしたんだけどさ」
 確かに名前が分からぬと不便ではある。名前を聞くのも、こちらから名乗るのが礼儀というものだ。
 クラストは簡単に名前を言い、その後必要そうな部分だけ状況を説明した。完全に理解できたかどうかは分からぬが、取り敢えずし<ておくだけ、した。
 サラはこれでよし、と言い、優しく少年に微笑んだ。
 

「で、貴方の名前は?」


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後書:言い訳

言い訳なんて無い!
更新するペースは個々の自由だー!
たとえそれが約1年振りの更新であってもだー!
しらんわー!



いや、内心すみませんと思ってます… orz
私も1年待たされたら正直イライラします。
わかっちゃいるんですが、まあ…
これ以上書くと本当言い訳にしかならないのでやめておきます。笑

取り敢えずお待たせしました、「超×∞」久々の更新です。
少しは発展させる事ができたかな、と思います…

護刃さん、私収拾つかなくなってきたのでどうにかまとめてくださいお願いしまーす(押し付けて逃げる)


07/7/30 ゆーじ



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